豪華絢爛な、日本物ショー『雪華抄』で和の世界に良いしれた後は、35分の幕間休憩を挟んで、トラジェディ・アラベスク『金色の砂漠』。
併演作 花組『雪華抄(せっかしょう)』豪華な宝塚日本物ショーの感想
2013年宝塚バウホール公演『月雲の皇子 -衣通姫伝説より-』で演出家デビュー以来、『翼ある人々 – ブラームスとクララ・シューマン -』、2015年の大劇場デビュー作、雪組公演『星逢一夜(ほしあいひとよ)』など、宝塚の作品らしく、上田久美子ワールドと呼ぶにふさわしい、登場人物達の感情の動きが心に染み入る、独自の世界感のある作品を生み出してきた、上田久美子先生の作・演出作品なので、楽しみにしていました。
↓↓『金色の砂漠』
(出典:https://twitter.com/)
作品としての金色の砂漠
「昔々、いつかの時代の、砂漠の真ん中にあるどこかの王国」という設定で繰り広げられるお話は、大人に向けた童話のようにも受け止められ作品でした。
「女の子の王族には男の子の奴隷が、男の子の王族には女の子の奴隷が、生まれた時からそばにつく」理解しえない風習があるその砂漠の中の国。
主人公のギィ(明日海りお)は、王家の長女・タルハーミネ(花乃 まりあ)に仕える奴隷として共に成長し、いつの日から王女に恋心を抱くようになります。
「奴隷は砂漠の砂と同じ」と言いつつも、やはりタルハーミネもまたギィに恋していますが、幼い頃より「王族としてのプライド」を第一に生きることを教育され、そこから逃れることができないゆえの哀しさがありました。
言葉(セリフ)とは裏腹なギィとタルハーミネ。
だからこそ、より二人の存在は儚く、悲劇な童話に感じられたのかもしれません。
明日海りおのギィ&花乃マリアのタルハーミネ
明日海りおのギィ
明日海 りお(あすみ りお)さんと言えば、中性的なイメージで、美しい正統派二枚目。
白が似合う・・・が定説ではないかと思っています。
しかし、今回の奴隷役「ギィ」は、憎らしさを感じつつも、美しいタルハーミネに惹かれていく自分自身へ癇癪を起こしたり、出自の秘密を知ってからは復讐に燃えていく。
頭は良いのに、思い込みが激しく、感情のままに行動するあたりは思慮に欠ける点がありますが、こういう傲慢な男性は、これまでのみりおさん(明日海)にあまりない?
みりおさんが演じるゆえにより悲劇性が高まるように思いました。
↓↓『金色の砂漠』の明日海りお
(出典:毎日新聞)
花乃マリアのタルハーミネ
美しく、プライドが高い王女タルハーミネ。
ビジュアル的にも、またその感情表現にも花乃 まりあ(かの まりあ)さんにあて書きされたかのようにぴったりの役でした。
タルハーミネがギィに対して、傲慢な言葉を言えば言うほど言葉とは裏腹に、ギィに恋しているのがわかります。
王室という狭い世界で、「王女」としてワガママ放題に育ち、すべてが自分の思い通りに物事が進むとおもっている、超わがままな未熟な人間なのです。
思慮浅く、他人を思いやることもできず、簡単に他人の人生をくるわせてしまうことに罪悪のかけらすら持たない、ただの自己中心な女なのですが、それは「王族」に生まれた故の悲劇だと思わせる点がありました。
↓↓タルハーミネの花乃まりあ
(出典:毎日新聞)
ギィとタルハーミネの愛
幼い頃にタルハーミネは伝説のように歌われる「金色の砂漠」を見に行く、と城を飛び出し、それを引き留めるためにギィは後を追い、砂漠から彼女を引き戻します。
砂漠は一度方向を見失うと、そのまま灼熱の中に倒れてしまう場所。
「金色の砂漠」はそんな中で見た幻想が歌として歌い継がれていたのかもしれませんが、幼少期のその出来事がストーリーのポイントになっていますね。
お互いに反発しているけれども、それは恋ゆえの反発であり、王女の結婚が決まった時に耐えきれないギィは王女に愛を告白します。
↓↓ギィとタルハーミネ
(出典:毎日新聞)
一旦は愛が成就したかに思えた途端に、「王女と奴隷の道ならぬ恋」が民の知るところになり、王女はギィを裏切り嘘を言い、テオドロス王子(柚香 光)と結婚します。
この場面は少し唖然?
このまま「愛の成就」を持って、砂漠へ駆け落ちして二人は「金色の砂漠」で愛の中で昇華した・・・というラストもありだと思いました。(それでは成り立たない?)
ギィは実は・・・という自分の出自の秘密を知り、彼の父がされたのと同様に、国王ジャハンギールはじめ王族達に復讐をしますが、最後にまた彼の母がなされたと同様にラルハーミネを自分の妃に迎えようとします。
因果応報、輪廻は巡る・・・という言葉が浮かびましたが、結局は思い通りにはいかなかったのですね。
ギィとタルハーミネはあまりにも「自分の感情」だけに忠実に生きすぎたのでしょう。
そして二人の間にある愛と憎悪は「金色の砂漠」で昇華される以外になかったのだ、と思うラストでした。
↓↓2.柚香光・芹香斗亜・瀬戸かずや・鳳月 杏他
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