『フライング・サパ』の出演者たちへの感想
ここまでにも書いた通り、コロナ渦による公演中止期間をのりこえたことで出演者たちの表現は深まっているのだろう・・・と思います。
芝居のリアリティーさは見事でした。
なかでもトップスターに就任以降、個人的には「なんとなくやる気がない真風涼帆」だと思っていた、真風さんが今回は違った!
『フライング・サパ』の真風涼帆はかっこいいだけではない
抜群のスタイルで超かっこいい真風涼帆さんが、今までよりもなおかっこいい!
丈の長いコートをひるがえすあたりは、もう見惚れる以外ない。
『フライング・サパ』でここまで真風さんがかっこよく見える理由は、身体の芯まですっかりと「オバク」が染み込んで、オバクとして舞台を生き抜いていたからこそだと思います。
全く個人的な真風涼帆評ながら、トップ就任後も超かっこいい男役さんなのに「真風色」が見えなくて、やる気があるのかないのか、覇気が感じられずに宙組を観るたびに物足りなさを感じていました。
でも『フライング・サパ』の真風さんは違ったのです。
なにがそこまで真風涼帆を変えたのか?
それは上田先生の言葉を借りると「真風涼帆の心に何が去来したか知るよしもありませんが」ということになりますが、上っ面のかっこよさだけでない「男役・真風涼帆」としてのなにかが、この作品でプラスされたことは間違いないでしょう。
星風まどかの成長著しい『フライング・サパ』
星風まどかさんは『WEST SIDE STORY』で、ただのかわいいだけの娘役じゃないことはわかってはいましたが、ほぼ歌なしでストレイトプレイでみせる演技にひかれました。
考えたら初舞台直後から注目していた娘役さんですが、今年で研7。
成長したものですね。
記憶を失い、記憶を取り戻すために「へその緒」を破壊しようとしたり、SAPAを目指そうとする「総統01」の娘。
時として自暴自棄に自分を傷つけ、もがいて生きている姿が痛いほど伝わってきました。
宙組さんは次作大劇場公演『アナスタシア』の見直し後のスケジュールも発表されましたが、私は勝手に、「星風まどか『アナスタシア』退団説を考えていますが、もしそうなるとしても十分に外部の舞台で成長していく娘役さんですね。
芹香斗亜さんが演じる精神科医
芹香斗亜さん演じる精神科医・ノア。
ひとが心を開きたくなるような雰囲気を持ちつつも、キリッとするべきところはキリッとした良い男ですね。
恋人未満だったノア(夢白あや)と物語終盤では恋人になり、ハッピーエンドになりますが、芹香斗亜さんってこういう役どころが続いていますね。『エル・ハポン』『天は赤い河のほとり』も良い人だったし、『異人たちルネサンス』もまだ悪に徹していなかった・・・。
キキちゃん(芹香)の持ち味はさわやかで明るいですが、二番手として今しかできない悪党を演じてほしいものです。
その他の『フライング・サパ』出演者
「総統01」の汝鳥伶(なとりれい)さん、SAPAにある宿屋の女主人「キュリー夫人」の京三紗(きょうみさ)さんという2人の専科生さんの出演が『サパ』の舞台を引き締めたのは言うまでもないこと、そして記憶を奪われ戦士となったオバクの監視役・タルコフの寿つかさ(ことぶきつかさ)組長にも心あたたまるものを感じました。
先般組替えが発表になり9月16日付で雪組生となる夢白あや(ゆめしろあや)さんは、かってオバクの恋人であり、政府転覆をはかるレジスタンスの一員「イエレナ」役。
ぼろぼろになりそうなぐらい傷つきながら戦うイエレナの姿は、心と身体の傷の痛みがそのまま届いてきそうでした。
「テウダ」というSAPAに滞在する、歩けない子供を持つ母親役の松風輝(まつかぜあきら)さんは、穏やかで優しく、ほぼ歌のない作品ながらまっぷーさん(松風)が歌う子守唄になごみました。はまりすぎな役どころ。
星組から組替え後、この作品が宙組初出演の紫藤りゅう(しどうりゅう)さんはスタイリッシュ、元から宙組生かと思うほど溶け込んでいましたが、良い風を吹き込んでくれる存在になりそう。
同期の瀬戸花まり(せとはなまり)さんは押出ある良い娘役さんになってきたものですが、歌えて芝居もできるし、上級生娘役がドンと抜けた穴を埋められるのはこの人かな。
留依蒔世(るいまきせ)さんは若干暴力的な若者、瑠風輝(るかぜひかる)さんは品行方正そうでどこかワル?みたいな配役は、これまでにあるあるだったのでちょっと方向性の違う役を観たいと思うものの、安心感と安定感があり。
気がつけばこんなに上級生?の星月梨旺(ほしづきりお)さんの「ロバートキン」はオバクの父親役で、ハンサム系のオジサマ役がよく似合い、家族思いの人物像も伝わってくるものの、やっぱり違う方向性でドーンと悪役とかも観てみたいものです。
観劇後にとても目をひく娘役さんが、長台詞もものともせずすごいなぁ・・・と思ってプログラムを観たら研2の山吹ひばり(やまぶきひばり)さん。芝居達者な人です。
ここまで主な登場人物ときになった役の生徒さんをピックアップしましたが、この作品の出演者全員が気持ちをひとつに『フライング・サパ』の世界を生きていたといえる、レベルの高い舞台でした。
『フライング・サパ』観劇の感想まとめ
『フライング・サパ』は脚本、演出、出演者たちのレベルが高い作品でした。
ただ一刀両断にするファンもいるように、宝塚の作品としては受け入れにくい面もあるのかもしれません。
・・・が、世の中の動きと同様に宝塚も進化や変化を求められるわけで、あま〜いラブストーリー主体ではない中に「宝塚らしさ」を追求する作品も必要になってくるでしょう。
『サパ』は小劇場だからこそのそんな未来への実験だったかもしれません。
上田久美子先生の可能性はまだ広がるだろうなぁ、宝塚も「清く、正しく、美しく」は絶対ながら(すみれコードの許容範囲か?と考える場面もあったけど>サパ)、こういう演出家さんってこれからも生徒の能力を引き出してくれるだおう・・・と思います。
『サパ』観劇感想を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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