上田久美子・宝塚演出家の講演感想、年歴、経歴も探る!天才と呼ばれる所以を見た!

宝塚コラム

 

10月23日、宙組の新人公演と同じ日・同じ時間に、宝塚歌劇団の天才若手演出家・上田久美子先生の講演会が京都大学で行われました。

 

京都大学未来フォーラム(第72回)パンとサーカスの危ない時代に

 

 

↓見事なホール!さすが京大です。

 

↓最近の建築ながら明治?大正モダンな天井の作り…♡

 

これに意気揚々と参加してきたノル香ですが、演出家の先生の話をじっくり聴くという機会は初めてでした。

これまでにも演出家の講演って…ありましたか?

ちょっと存じ上げないのですが、宝塚を20年観てきたノル香的には、「この先生って一体どんな目的でこういう作品を作ったのだろう」と思うことが非常に多くなってきた時期だったので、開催の報を聞いた時はもう飛びつきました!

 

特にウエクミ先生は「天才」と称える声が非常に多く、これまでに発表してきた作品はハズレナシ!

どの作品も連日大入りを記録した、いま宝塚歌劇団が抱える若手エースです。

 

そんな「天才」が一体どんな人物なのか、どんな語り口調なのか、何を考えているのか…鼻の穴を膨らませて京都まで飛んできましたので、その概要と感想をどうぞ!

 

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上田久美子先生の経歴と演出作品紹介

まずは、「ウエクミ先生」とファンから愛される上田久美子先生の経歴を。

今回の講演会で初めて語ってくれたご自身の過去話もありましたので、それも踏まえてお伝えします。

 

上田久美子(うえだくみこ)
宝塚歌劇入団 2006年
デビュー作 2013年月組バウホール公演『月雲の皇子 -衣通姫伝説より-』
出身地 奈良県天理市
出身校 京都大学フランス語学フランス文学専修
誕生日 1977年 or 1978年生まれ
愛称 ウエクミ先生

 

京大出身ということだけでもう「さすが…」という感じ。

宝塚歌劇団の演出家は基本的に皆さんやはり高学歴。

そうじゃなきゃあんな仕事できないですよね~…

「やっぱり我々庶民とは違うわ…」という、ジェンヌさんとはまた違った『雲の上感』があるんですが、在学中の様子を聞くと意外にも…

「山崎パン工場でのバイトに明け暮れた、ほぼ寝たきり生活」であったことがこの講演会で判明!

 

部活にもサークルにも入らず、「あまり学校にいなかった」という、ダメ学生ぶりが少しわかって、なんとなく「こんな天才でも昔から天才だったわけじゃないんだ…」とホッと安心しました(;^ω^)

それでも、名門大学を留年するでもなく就職浪人するでもなくきちんと卒業&就職されたわけですから、やっぱりすごいんですけどね。

 

当時は就職氷河期だったということで、たまたま受かった製薬会社の事務に。

むしろ高学歴が敬遠される時代だったので、「京大行った意味って…」と疑問を感じたこともあったそうな。

でも、ノル香もウエクミ先生とたぶん同い年ですが、そんなに氷河期でもなかったような…(;^ω^)

やっぱり「あんまりに高学歴の女は使いづらい」という風潮があったのでしょうか。

高学歴ではないノル香はそういう目に遭ったことはありませんが(泣)

 

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そして製薬会社での労働に意義を見出せず、早々に転職を考えます。

昔から伝統文化に興味があったので、演出家というわけでもなく、舞台に関わる仕事がしたいと思い立ち、そのとき募集のあった演劇関連の求人にいろいろ応募。

その中に宝塚歌劇団の演出助手というものがあったので、特にヅカファンというでもなく応募し、なんと宝塚のみ合格だったから入団したそうです。

もし他の劇団に合格してそこに入社していたら一体どんな活躍をされていたのでしょうか…

 

でも、よくも採用してくれました宝塚歌劇団人事部!!!

ウエクミ先生の存在なければ、今の客入りもまた変わっていたでしょうね。

 

ちなみに、祖父母が九州にいるらしく、よく遊びに行っていたとか。

なかなかたくましいおじいさま・おばあさまのようで、稲刈り中にそばにいたキジに鎌を投げて仕留め、その日の晩御飯のごちそうにしたとか!

今や90歳を越えるおばあさまが「歳だからもう何もできなくて~」とか言いながら何キロもある魚をひとりで運んできてドカンと頭を落とし、バッサバッサと捌いてくれるとか(笑)

そういう人間の野性味あふれる逞しさを見て育ってきたのも、今回の講演テーマに大きく影響を与えているようです。

 

上田久美子先生の演出作品

 

2013年 『月雲の皇子』(月組バウホール公演・珠城りょう主演)
2015年 『翼ある人びと 』(宙組・ドラマシティ&日本青年館・朝夏まなと主演)
2015年 『星逢一夜』(雪組・早霧せいな主演) *大劇場デビュー作品
2016年 『金色の砂漠』(花組・明日海りお主演)
2017年 『神々の土地』(宙組・朝夏まなと主演)
2018年 『BADDY』(月組・珠城りょう主演)*初ショー作品
2019年 『霧深きエルベのほとり』(星組・紅ゆずる主演)

 

宝塚歌劇団の演出家は、生徒さんと同じように入団してしばらくは演出助手として先輩演出家のサポートにつきます。

そうして7年の助手時代を過ごし、2013年に珠城りょうさん初主演となった月組バウホール公演『月雲の皇子』でデビューを果たします。

 

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新しい演出家のデビュー作には、「一体どんな作品を作る先生なの?!」という大注目が集まりますし、演出家側としても渾身の作を披露しようとつい力みがち。

「やっちまったっぽいね…(;^ω^)」

というデビューを迎える演出家も多い中、ウエクミ先生はこの作品からもう「天才」との呼び声が。

 

特に、夢を売る宝塚で悲劇作品を披露すると「救いがない!」という批判が上がることも多いんですが、悲劇の中にもどこか「そうして生きるしかなかった哀しさ」みたいな余韻が残るのがウエクミ作品のすごさ。

今のところ、『BADDY』以外は悲劇作ばかり。

でも『BADDY』もある意味悲劇なのでしょうか…?

爆発の炎に包まれながらトップコンビが憎しみと愛に突き動かされながら情熱的なデュエットダンスを踊り、そのまま業火に包まれていく…というエンドなので。

その、「どうにもならない、制御しようのない、人間ならではの葛藤」というのはウエクミ作品の共通点かもしれませんね。

その「人間のダメさ加減」を描きたがるという点はなんだか太宰などの歴史的な文豪と似ているような…。

 

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そう思うと、悲恋を得意とする柴田侑宏(しばたゆきひろ)先生の世界観とも共通するものがあるように思います。

来年に上田久美子先生が演出する予定になっている『霧深きエルベのほとり』は、初演の演出はあの菊田一夫先生、再演の1983年は柴田侑宏先生が演出となっています。

やはりこの『霧深きエルベのほとり』も、どうにもならない男女のつらい恋を描いた作品。

今回の再演はウエクミ先生自ら劇団に申し入れたそうですので、菊田作品と柴田作品のファンとお見受けします。

 

なぜかこれまで、珠城りょうさん2回、朝夏まなとさん2回と少し演出する生徒さんが重複していました。

初演出となる紅ゆずるさんをどのようにして演技指導するのか非常に楽しみです!

 

 

↓↓2.ウエクミ節『パンとサーカスの危ない時代』ってどういう意味?

コメント

  1. おさひろ より:

    ノル香様
    こんにちは。
    ウエクミ講演会、凄く興味あったので、レポ嬉しいです。
    出来ればレジュメ、出版して欲しいほど。
    女帝3名の作品、好きです。
    ウエクミ先生の作品は、終わってからずーーんと心に残りますよね。
    ララランド見ましたけど、ウエクミ先生と同じように感じました。内容があまり残らない。
    だったら、もっとミュージカル的で良かったのに、と。
    茜さすのくだりも興味深いです。
    でも、そういう感情って、ある程度年齢を重ねないと分からないのかもなぁって思いました。
    宝塚って不倫ドロドロ、特に柴田先生作品多いですが、根底はどちらも魅力的で選べない、なんでしょうし、世間でも、女優の方や元オリンピック選手の方など騒がせてますが、その気持ち、分からないでもない。
    若い時は猪突猛進みたいなことありますし、まぁそれが若さでもある。

    そして、ノーマークだった星組公演、断然楽しみになってきました。
    ありがとうございました。

    追伸 バウでのステッカー大切な思い出です

    • すみれ子 より:

      おさひろさん

      ご訪問とコメントをありがとうございます。
      管理人のすみれ子です。

      本当に上田久美子先生の作品は、小説のように心の中にしっとりとした余韻を残し、
      味わい深いモノがありますね。
      作・演出家としてデビューされて以来、宝塚での上演作はすべて観劇しますが、その秀逸さには
      毎作品驚かされるばかります。

      確かに数々の名作を書かれた柴田侑宏先生の作品。作品としての奥行きのある作品と深さは、
      素晴らしいと思います。・・・が、おさひろさんがおっしゃるように「不倫」が描かれているのは
      私自身「うーーーん・・・・」と思ったりも(苦笑)。

      恋愛や結婚は時代と共に変化しているので、時代背景を考えれば、そういう形態にとらわれない時代
      を描かれているからなのだろう、と思っています。

      なにはともあれ、宝塚の作・演出家といえば、ほんの20年くらい前(でしょうか?)まで男性陣が
      しめていたのですから、上田先生、小柳先生といった女性がどんな活躍をしてくださるのか非常に
      興味深いところですね。

    • 路線 ノル香 より:

      @おさひろ様

      コメントありがとうございます!
      普通の公演と違ってこのような講演会はなかなかレポを書いている人が少ないですよね~。
      楽しんでいただけて良かったです!

      ウエクミ先生は一貫して「もっと自由な表現を!」と訴えていたようですので、演出家としてやはり窮屈さを感じているようでした。
      でも、そんな制約の中でこそ光る先生のようにも思えましたし、そんな反骨精神があったからこそあの講演会の内容になり、あのレジュメになったわけですもんね。
      悪いものになぜか惹かれてしまう、いけないとわかっているのにそちらに向かってしまう人間臭さをスミレコード内でこれからも絶妙に表現し続けてほしいです。

      そして観たあとに、「不倫はいかん!二股もいかん!……でも気持ちはわかる(-_-)」という激しい葛藤を残す作品作り、期待したいですね。

  2. なる より:

    路線 ノル香様

    初めまして、いきなりのコメント失礼いたします。

    このレポを読んで、本当に行きたかったと心底思っています(。-_-。)

    突然なのですが今、大学の卒業論文で宝塚歌劇団のことについて書いています。

    その中で上田久美子先生のことも書きたいのですが、どうしてもそのレジュメが読みたいのです。

    もし路線様がよろしければ下記に書いてあるメールアドレスにメールを送ってきてくださいませんでしょうか?
    そのままくれ、原本をよこせというのではないことではありません。

    いきなりで失礼なのは重々存じておりますが、ご協力くださると本当に嬉しいです。

    失礼いたします。

    • すみれ子 より:

      なるさん

      ご訪問とコメントをありがとうございます。
      管理人のすみれ子です。

      卒論のテーマに「宝塚」とおっしゃるファンがいること、オールドな一人の宝塚ファンとして嬉しく
      思っています。

      また改めて路線ノル香から連絡があると思いますので、今しばらくお待ちくださいね。

      女性の演出家も何人か誕生した宝塚ですが、「女性」とかそういうくくりではなく、一人の演出家と
      して、もう上田久美子先生の世界観はファンを魅了する要素がいっぱい。

      じっくりと研究してくださいね。(←一応エールのつもり ^^)

      研究を離れた視点でも、またお立ちよりいただければ幸いです。

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