『凱旋門』で見逃せない人物って?
感想の冒頭にも書いたように作品の時代背景は第二次世界大戦開戦直前のパリ。
ここにはラヴィックのようにドイツから逃れてきたドイツ人。
スペインからの亡命者やユダヤ人など、様々な国籍や事情を持った人達が集まっています。
そんな人物が掘り下げて描かれている柴田先生の作品。
どの役も丁寧に描かれ見逃すことはできません。
ちょっとびっくりな彩風 咲奈(あやかぜさきな)さん演じるアンリ。
今風に言うと「DV男」とです。
彩風咲奈さんの甘い雰囲気が、いつもは優しく気に触ることがあれば手をあげてしまうDV男になぜかはまっている。
不法滞在者を下宿させている宿の女主人・フランソワーズの美穂圭子(みほけいこ)さん。
肝っ玉母さん風に愛があり、優しい女将は美穂さんならではの人間味あり。
スペインからの亡命者・ハイメ(朝美絢)とその幼馴染みのユリア(彩みちる)、ビンダー一家(久城あす、早花まこ、潤花)はユダヤ人でフランソワーズの宿(オテル・アンテル)の住人。
どの人達にもエピソードがあり、苦しい状況の中で必死にもがいて生きている人が見えてきます。
ドイツのゲシュタボの一員であり、ラヴィックの過去と深く関わりのあるシュナイダー役の奏乃はると(そうのはると)さんは、強烈なインパクトのある演技。
こういう生徒さんって貴重だなぁ・・・と存在感を感じました。
ラヴィックの友人で医者としての実力を評価して仕事を依頼している、病院長のヴェーベル(彩凪翔)も、クールに見えるのですが情のある人物です。
『凱旋門』は宝塚に似合う作品か?
物語は英仏からドイツへの宣戦布告により、パリに不法滞在する外国人が取りしまわれ、収容所へ連行されるところでラストを迎えます。
不穏な時代を前に自死を選んだ者。
偽造パスポートで自由を求めてアメリカへ渡る人。
不法滞在者であることを認め収容所へ連行される人。
それぞれの人生の悲哀が胸に迫ってくるものがありました。
決して楽しくロマンチックなお話じゃないし、宝塚に似合うかと問われればちょっと考え込んでしまいます。
(もちろん王道に恋愛は盛り込まれているのですが)
ゲシュタボという言葉やナチの足音が聞こえてくるような空気感に、リアルにぞくっと背筋が寒い思いもありました。
でもそんな中で必死に明日へ向かって生きようとしている人たちの暖かな人の温もりが、ほのかに感じられる点は宝塚にこういう作品があってもいい!
そう思います。
そして宝塚の良さはこの幕が下りた後に幕間休憩を挟んで、ノリノリ楽しいショーが待っていることですね。
悲しさが胸に迫っても、気まぐれな猫に変身した雪組生が熱く盛り上がったショーで「キャーーー」とときめきいっぱいにしてくれます。
・・・ということで、まだまだ続く観劇レポ。
次は『Gato Bonito!!』の感想です。
↓↓ 5. 猫が繰り広げる気まぐれな世界『Gato Bonito!!』
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