宙組『フライング・サパ』観劇感想レポ・作品として&出演者たち

観劇レポ

宙組公演『フライング・サパ』は本来ならばTBS赤坂ACTシアター(2020年3月30日~4月15日)で公演予定でしたが、コロナの影響で梅田芸術劇場、日生劇場と場所とスケジュールを変えての公演となりました。

  • 梅田芸術劇場メインホール 
  • 日生劇場 

 

宝塚の新進気鋭の作演出家・上田久美子先生の作品で、良い意味で宝塚の域を越えた佳作とおおむね評判ながら、一部には描きたいものがわからず意味不明と一刀両断な感想もあるこの作品。

管理人・すみれ子は月組『BADDY(バッディ)』の芝居バージョンであり、『BADDY』が「世の中良い人ばかりじゃつまらない」をワルなBADDYが地球に乗り込んできて軽いタッチで啓蒙するのと同様、負の思考を排除して統制された世界・ポルンカ(水星)で、それに抵抗する主人公オバク、ミレナたちの生きる姿は「人間は負の感情もあわせもって生きることで希望をもって前にすすむことができる」というメッセージを伝えてくれたように思っています。

傷ついたり、悲しみにあけくれたりするかと思えば、人と違うことを悩んだりするのが人間。過去も今も世界のどこかでは殺傷という愚かしい行為をしているのも人間。

でもそうしたおろかしさを含めて葛藤しながら生きていくことこそが「感情ある人」として生きることの素晴らしさなのだと教えてくれた気がしました。

私は宝塚が公演を再開してからリアルに観た第一作目が、宙組『フライング・サパ』(梅田芸術劇場メインホール)でした。

正直、このタイミングでこの作品と出会ったことは重く感じられ、観劇レポを書く力はまったくわきませんでしたが、観劇から1ヶ月が経って「このタイミングだからこそ感じ取れたことがあるかもしれない」と、感想をまとめてみることにしました。

 

 

 

\この記事のポイント/

 

 

スポンサーリンク

 

『フライング・サパ』コロナで公演中止後の上演で思うこと

プログラムに上田先生が寄稿したあいさつ文に「3月終わりから4ヶ月たって、皆の心に何が去来したか知るよしもありませんが、私達の『フライング サパ』は、もうあの時のものと違うでしょう」とありました。

宝塚ではかってない長期の公演休止で生徒さんたちも稽古すらできない期間が続き、その間には多くの葛藤があったことは容易に想像できますね。その葛藤が『フライング・サパ』という作品の奥行きを深めていたことは、間違いないと思っています。

梅芸の初日、千秋楽の真風涼帆(まかぜすずほ)さんのご挨拶からも舞台に立てない期間の心情はひしひしと伝わってきたし、芹香斗亜(せりかとあ)さんが涙で顔をくちゃくちゃにされていたことも忘れられない・・・

この記事を書いている今現在は、日生劇場公演中ながら公演はコロナの影響で出演者、スタッフに感染者が出れば公演中止になるかもしれない。

おそらくは毎回の舞台を「これが最後かもしれない」という想いで100%以上のエネルギーで演じているに違いないと思う。

それがまた『フライング・サパ』の世界を深くめていっているのかもしれない。

世界中のひとがかってないコロナ渦に戸惑う生活を送ってはいますが、タカラジェンヌもまた芸事に精進することにはエネルギーを注いではきたものの、ここまで社会的な制約など未経験だったはず。

喜ばしくはない経験ですが、コロナ渦で経験したことはタカラジェンヌをも人として、舞台人として大きく成長させたのではないかと思います。

 

スポンサーリンク

 

作品としての『フライング・サパ』

『フライング・サパ』の作・演出についての感想

コアな「上田久美子ファン」とまではいきませんが、上田先生の作品だから観たいと思った作品でした。

その期待を裏切らない緻密に書き上げられた脚本で、台詞に無駄がなく、宝塚の脚本にあるあるのツッコミどころがない点は「あぁ、やっぱり上田先生のホンは違うな」という印象でした。

プログラムによると、上田先生がこの作品の構想を得たのは、初代iPhoneの発売時というから実に10年以上前です。

それ以降スマホがどんどん普及して、今やスマホなくしてはコンビニすら行けないような時代になりつつありますが、そこにどんどん個人情報を入力し、ある程度の個人情報は絶対に吸い取られていて悪用される可能性はゼロではないとわかってはいるものの、その便利さゆえに毎日使っています。

おそらくは私たちが毎日使っているスマホが、ポルンカの「へその緒」といわれる生命維持装置。

「へその緒」は情報を吸い取るだけではなく、人が生きていくために必要なすべてをまかなってくれるので(呼吸から栄養摂取まで「へその緒」がやってくれるから人は飲食も不要)、重要性ははるかに大きいのですが、何を考え、どう行動して・・・ということまで「へその緒」をとおしてポルンカの総統に知られてしまうところは、現在のスマホに少し似ていると思うのです。

何気なく毎日使っているスマホながら「みんなが使っているから使うって、それでいいの?」「自分で考えて正しく使うことが大切ではない?」と警告されているような気分になりました。

また「POLNKAニュース」という番組が伝える情報が事実とは異なるところなどは、今の私たちも報道に対しては視点を変えて考えてみるべきだと教えてくれたし、時として人間が「悲しみ、不安、恐れ、辛くなる感情から開放されていきたい」と願ったとしても、それと付き合いながら生きていくことが、人が人として未来への希望を持っていきられると教えてくれたもの、この作品。

1回の観劇では把握しきれないぐらいたくさんのメッセージがこめられていて、観劇の折々の感情によっていろいろな角度で観ることができる作品のようにも思いました。

やっぱり上田久美子先生の作品はすごい・・・!

 

スポンサーリンク

 

映像と音楽がマッチした『フライング・サパ』のおもしろさ

とにかく映像の使い方がうますぎます!

おお!宝塚もここまで映像を駆使できるようになったのね・・・ともいえますけどね。(アニメが流れて失笑された時代もあったけれど ^^;)

外箱作品は大劇場作品に比べると舞台装置は簡素なのはふつーなのですが、梅田芸術劇場の舞台でもここまでやれるんだ!と感嘆するレベルです。

音楽は映画や舞台に多くの楽曲提供をしてこられた、三宅純さんの作品。

中東っぽいような旋律だったり、ふわふわと浮遊感を感じたり、少し変わった音楽ながらSF作品にはハマる。

出演者たち、舞台装置+映像、音楽がうまく合体できたから『フライング・サパ』の世界観は広がり、深まったとも感じられました。

 

 

↓↓2.  『フライング・サパ』の出演者たちへの感想・真風さんすてきー!

コメント

タイトルとURLをコピーしました